外部からの信号に応答し触媒活性の精緻な人工制御が可能な機能をもつ固体触媒を得ることを目的とし、強誘電体表面に伝搬する弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)に着目し、これを応用したデバイス型固体固体触媒を作製した。強誘電体結晶として、128^1-Y-X LiNbO_3および36^1-Y-X LiTaO_3単結晶を用い、それらの結晶表面の両端にクシ型(IDT)電極をフォトリソグラフ法により取り付け、SAWの振動方向が表面に垂直なRayleight(R-SAW)波および振動方向が表面に平行なShear Horizontal Leaky SAW(SH-LSAW)波の発生用の素子とした。作製素子の伝送特性を調べ、その帯域特性がIDTに基づく特性値と一致する結果を得た。R-SAWおよびSH-LSAWの伝搬路に10nmのNiO、TiO_2、CuあるいはPdを薄膜触媒として接合した素子を作製し、エタノール酸化反応に対するSAWの触媒活性化の効果を調べた。これらの酸化物および金属触媒の活性は1WのSAW印加により3〜4倍も増加することを示した。触媒反応の温度依存性から、R-SAWの印加はCu上の反応の活性化エネルギーを55kJ mol^<-1>から39kJ mol^<-1>へと約30%低下させ、またPd薄膜触媒については、42kJ mol^<-1>から29kJ mol^<-1>に低下させる効果をもつことを見出した。一方、SH-LSAWの1W印加においても、Pd触媒の活性が3倍増加した。これらの結果からSAWの振動モードによらず同程度の触媒活性化の効果が存在することを明らかにした。SAW伝搬路に電界発光体であるZnS(Cu添加)を薄膜で担持した場合に、R-SAWおよびSH-LSAWの伝搬により共に強い発光が生じる結果が得られ、R-SAWは9×10^3 V cm^<-1>、またSH-LSAWは1×10^4 V cm^<-1>の電界を発生させることを示した。この電場の強さは同程度であり、触媒活性の増加効果がR-SAWとSH-LSAWで類似することと対応した。本研究の成果に基づき、SAWを用いた固体触媒において薄膜触媒活性の人工制御が可能となることを結論した。
|