研究概要 |
臭化ドデシルピリジニウムを臭化ドデカンとピリジンとの反応によって合成し,その水溶液およびNaBr水溶液の表面張力,密度および静的光散乱を測定した。NaBr濃度はOから6.00Mまで変化させた。いずれの方法でもミセル形成の徴候を示すことができたが,特に表面張力は異常な現象を示し,その解釈は今後の研究に俟たなければならない。こゝには光散乱測定の結果について述べる。 還元散乱強度は界面活性剤濃度が臨界ミセル濃度を越えると,急増し、その程度はNaBr濃度0.5〜1.0MまではNaBr濃度が高いほど大きいが,1.0M以上ではNaBr濃度が高いほど低くなる。臨界ミセル濃度は,CorrinーHarkinsの式に從って,イオン生産との間に直線二重対数関係を示して,NaBr濃度の増加と共に減少する。その傾斜は0.573で,水中の電離度0.580に対応する。Debyeプロットは,NaBr濃度の増加と共に勾配が低くなる直線となり,3.00MNaBrで勾配はOとなり,それ以上では負の勾配をもつが,その程度は小さい。直線の切片の逆数からミセル分子号を求めると,水中では1.5,100で,NaBr濃度の増加と共に少し増加するが,0.30MNaBr以上では23,200と一定である。すなわち、NaBr濃度が0から0.30Mまでは,会合数が46.0から70.7までの球状ミセルが形成されるが,それ以上のNaBr濃度では,ミセル会合数は70.7のまゝでNaBr濃度によって変らないことになる。このような最大会合数をもつ球状ミセルは稠密で,しかも単量体との解離会合も抑制されているのでないかと想像される。ミセル溶液の第二ビリアル係数は水中で,9.85×10^<-3>,1.00MNaBr中で0.110×10^<-3>,6.00MNaBr中では-0.235×10^<-3>である。
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