研究概要 |
本年度の主な研究成果は次の通りである。 (1)α,α'-ジクロロ-o-キシレンの266nmレーザー励起によりo-キシリレンに帰属される蛍光が450nmに現われる。この蛍光強度のレーザーパワー依存性から、1光子により2つの塩素が解離しキシリレンとなる過程と、1光子により1つ塩素が解離しラジカルが生成し、そのラジカルがさらに1光子を吸収して塩素が解離しキシリレンとなる過程の存在が示唆された。 (2)1,8-bis-[4-(α-diazobenzoyl)phenoxy]octane (BDO)の反応初期過程に対する308nmレーザー光強度と磁場効果をレーザー閃光法により検討した。レーザー励起により330nm付近にジフェニルカルベン(C)の、350nm付近にジフェニルメチルラジカル(R)の過渡吸収が現れ、レーザー光強度の増大とともにその強度比R/Cが増大した。強励起の時にのみRの吸収の減衰が磁場に約200nsから6μsになった。すなわち、弱励起の時は鎖の一端にあるジアゾ基が分解しモノカルベンができる。モノカルベンは環化しアジンをつくるとともに、溶媒中の不純物から水素を引き抜きモノラジカルを生成する。強励起するとモノカルベンやモノラジカルの他端に未反応のまま残っているジアゾ基がさらに光分解しビスカルベンやビラジカルが生成する。磁場効果はこのように2光子過程により生成したビラジカルの三重項ー一重項項間交差が三重項のゼーマン分裂により抑制されたためであることが解明された。 以上の研究から、ある種の光反応ではレーザーと磁場の併用により反応が制御できることが明らかになった。
|