研究概要 |
本研究の主な研究成果は次の通りである。 (1)レーザーによる光反応制御:キシレンのハロゲン置換体の光反応初期過程に対するレーザー光強度の効果をレーザー2段階励起蛍光法などにより研究し、α,α'-ジクロロ-o-キシレンの266nmレーザー励起により、o-キシリレンは1光子過程と2光子過程との2つの過程により生成することが明かとなった。 (2)磁場による光反応制御:一重項および三重項メチレン鎖両端ビラジカルをレーザーにより生成し、その磁場効果を詳細に検討した。その結果、三重項ビラジカルでは磁場中でのビラジカルの寿命は三重項副準位の間のスピン格子緩和により決まること、ラジカルの回転運動により誘起された異方的な核スピン-電子スピンの超微細相互作用により緩和が起こることなどが解明された。一重項ビラジカルの研究から磁場効果はnが8以上で起こるが、磁場効果の大きさそれ自体は、ラジカル・鎖・溶媒の種類に大きく左右されることが解明された。更に磁場効果とマイクロ波効果の併用によりラジカル反応を自由に制御できることも明らかになった。 3.レーザーと磁場による光反応制御:1,8-bis[4-(α-diazobenzoyl)phenoxy]octane(BDO)の反応初期過程に対する308nmレーザー光強度と磁場効果をレーザー閃光法により検討した。磁場効果は強励起の時ラジカルの吸収の減衰に見られた。強励起すると2光子過程によりビスカルベンやビラジカルが生成が生成する。磁場はこうして出来たビラジカルの三重項-一重項項間交差に作用することが解明された。 以上の研究から、ある種の光化学反応ではレーザーと磁場により反応過程が制御できることが解明された。
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