1.溶液物性 ドデシルアンモニウムパーフルオロアセテート(DAPA)、プロピオネート(DAPP)、ブチレート(DAPB)の溶解度とCMCを測定し、対イオンの疎水性が溶解度、CMC、並びにミセル形成に及ぼす効果を検討した。水への溶解度は、同じドデシル鎖を持つイオン性界面活性剤の値より小さく、且つ溶解のエンタルピー変化も同様に正ではあるが小さい値を示した。DAPBのミセル形成温度は非常に高く(>95℃)、測定できなかった。DAPAとDAPP並びにDAPAとDAPBの混合ミセルのCMCを測定し、ミセル表面上の対イオン同志の相互作用を評価したところ、PAイオンとPPイオン同志は殆んど理想的に混合するが、PAイオンとPBイオン同志の相互作用はより強く、混合ミセルのCMCは理想混合より負にづれた。多環芳香族化合物(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン)のDAPAミセルへの最大可溶化量を求め、この値より可溶化平衡定数、その値の温度変化より可溶化に伴う自由エネルギー変化、エンタルピー変化、エントロピー変化を求め、可溶化に及ぼすベンゼン環の寄与の効果を評価した。更に光散乱光度計(設備備品)を用いてDAPAとDAPPのミセル分子の会合数を測定したところ、DAPAでは500〜1000、DAPPでは約5〜6万と判明した。 2.単分子膜物性 炭素数14、16、18のアルキルアンモニウムイオンと炭素数8までのパーフルオロカルボン酸イオンからなる20種のイオン性活性剤を合成し、表面圧-面積曲線、表面電位-面積曲線を調べた。その結果3種類の相転移の存在が明らかとなった。第1は膨張膜から凝縮膜Iへ、第2は凝縮膜Iから凝縮膜IIへ、第3は凝縮膜IIから凝縮膜IIIへの転移であることが分かった。これらの転移は、炭化弗素イオンと炭化水素イオンの組合せによって変化することが明らかとなった。
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