研究概要 |
1.酸性リン脂質,phosphaticlylglycerol(PG)を先ず,対象物質として選び,種々の塩濃度において多重膜ベシクルを形成し,これらのベシクルの集合形態の移行過程を現有の高感度示差走査熱量計を用いて,ベシクルの有するゲル-液晶相転をモニタ-することで追跡した。この熱測定実験と平行して,形態変化が著しいと見なされるベシクルについては,ネガティブ染色法による顕微鏡撮影を行ない,形態変化をより明確にした。以上の研究によって明らかにされた成果を要約する:i)PGの多重膜ベシクルは液晶相温度での熱処理によって〜100nmサイズの一重膜ベシクルに移行した後に,大きいサイズ(〜500nm)のベシクルを経てヘリックス構造を有する円筒状の棒状ベシクルに移行した。この移行過程の速度は塩濃度に依存し,高温濃度はこの速度を低下させた。ii)i)の実験結果を基にして,多重膜ベシクルから一重膜ベシクルへの移行に伴われるエネルギ-(エンタルピ-)を科研費で購入した高感度恒温型反応熱量計を用いて測定した。iii)その結果,PG1モル当りについて2Kcalに相当するエネルギ-が放出されることで多重膜から一重膜ベシクルへの移行が達成されることが明らかにされた。この結果は,中性脂質PCの結果とは全く異なり,一重膜ベシクルの方がより熱力学的に安定であることを示す。 2.中性リン脂質,phosphaticlylethanolamine(PE)を次に対象物質として選んだ。これはPCリン脂質ほど親水頭部のサイズは大きくなく,調製された小さいサイズの一重膜ベシクルは直ちに,大きいサイズ(〜100nm)の一重膜ベシクルに移行した。その後,このベシクルも上述のPGと同様にさらに大きいサイズに移行した後に,ヘリックス構造を有する棒状ベシクルに至った。
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