研究概要 |
第一段階として、(4n+2)(4n+2)π系の渡環π-π相互作用を調べるために、10π系の1,6メタノ[10]アヌレン[3.3]シクロファン骨格に組み込んだN,N-ジシアノ-2,16-ジアザ[3.3](2,7)(1,6-メタノ[10]アヌレノ)ファンを合成した。生成物は完全重なり型と部分重なり型の二種の異性体の混合物として得られ(収率22%,生成比1.0:2.4)、分取高速液体クロマトグラフィーによりそれぞれの異性体に分離した。二個のアヌレン環を含むアヌレノファン類の合成はこれが初めての例である。半経験的分子軌道法計算による予測をもとに、これらの化合物の構造と渡環π-π相互作用を^1HNMRおよび電子スペクトルにより調べた。 次の段階として、さらに大きな14π((4n+2)π,n=3)系のトランス-15,16-ジメチルジヒドロピレン二個をエチレン鎖でつないだ二層アヌレンを分子設計して合成を進めている。このジヒドロピレンは空気による酸化や熱に安定であり、テトラヒドロフラン中でカリウム還元すると容易に16π系(4n,n=4)のジアニオンになることが知られているので、合成した二層アヌレンでは溶液中で4nπ系の相互作用が観測される可能性がある。 この研究の最終段階として、引力的な相互作用が期待される(4n)π系の相互作用を調べるために、中性条件で(4n)π系の性質を示す8b,8c-diazacyclopent[fg]acenaphthylene(4n,n=3,12π)からなる[3.3]アヌレノファン合成を計画して合成を進めている。
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