研究概要 |
14族元素(特にケイ素、ゲルマニウム等)が連なった化合物(カテネート)の反応を明確にし、その化学を一層発展させるために重要な反応中間体としてのポリゲルミルイオンラジカル(陰イオン、陽イオン)の構造、反応性を化学反応的にまた分光学的に研究することを目的とした。(1)ポリゲルミルイオンラジカルを反応中間体とする反応研究ー電子移動反応;ジクロロメタン溶液中、ポリゲルマンとテトラシアノエチレン(TCNE)の混合物のUVを測定すると、電荷移動(CT)吸収スペクトルが観測でき、その吸収極大はゲルマニウムの鎖長の増加とともに長波長側にシフトをする。測定した吸収極大値は、対応するポリゲルマンの第一イオン化ポテンシャルおよびUVスペクトルにおける遷移エネルギー値とそれぞれ非常に良い相関を示す。興味あることに、ポリゲルマンーTCNEのCT錯体は室温では安定であるが温和な条件では徐々に1:1付加体を生成する。クロラニル,ジシアノジクロロキノンなどの電子受容体の場合でも同様である。この付加体生成の中間体としてポリゲルマンから電子受容体への電子移動の結果生成するポリゲルミル陽イオンラジカルが重要な役割をする。(2)ポリゲルミルイオンラジカルの生成と同定;パルスラジオリス法においては、溶媒の使いわけによりラジカルカチオン(塩素系溶媒中)およびラジカルアニオン(THF溶媒中)を過渡的に形成することが可能である。様々な分子量をもつ直鎖ポリゲルマンのイオンラジカルを測定すると、原料であるポリゲルマンに比較して紫外・可視部の吸収に加えて赤外部にブロードな吸収が観測された。
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