研究概要 |
多種多様な抗腫瘍性化合物が、これまで海洋生物から発見され,構造決定からなされている。しかし、実際に医薬品として用いられているものは皆無に等しい。現在ブリオスタチンおよびブリアノシン類は有望な抗腫瘍性物質として考えられ、世界中でその合成が試みられている。筆者らは、ブリオスタチンIIの全合成を目指し、A環を含むC_<17>ーC_<27>部分およびC環を含むC_1ーC_9部分の合成を行い、さらにB環部に相当するC_<10>ーC_<16>部分の合成を検討し、最近天然物と同じ絶対立体配置を有するビラン環(B環)の構築に成功した。しかし、合成経路の反応が約20段階を要した。したがって、もう少し短段階でC_<10>ーC_<16>部分を合成する方法を現在検討している。また、A環部分とB環部分を二重結合を形成することにより結合する方法として、ウイッテッヒ反応やスルホンを用いた付加反応を現在検討している。 他方、プリアノシンーディスコハブジン系アルカロイドの全合成については、プリアノシンAのA,B,C,D,E環に相当するディスコハブジンCの全合成に成功した。本合成の鍵反応は、最終段階におけるフエノ-ルの電解酵化に伴うスピロ環の形成にある。電解酵化にあたっては、種々の条件を検討し、これまでの最高収率は30%であった。現在、プリアノシンAの合成において、D環上のN原子の隣りに脱離しやすいシアノ基などの置換基をつけた誘導体の合成を試みているが、現在まで成功していない。 他方、ブリアノシンAのA,B,C環部に相当する部分を持つバザレンC及びイソバザレンCの合成にも成功した。特に、これらの化合物群は、トポイソメラ-ゼII阻害活性を示し、注目されている。現在、バザレンCよりもっと構造的に複雑なバザレン類の合成を検討している。
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