研究概要 |
本研究においてはまず,ゲルマニウムーフェニルフルオロン錯体の種々のメンブランフィルタ-(MF)への捕集挙動を比較検討し,またこれを利用してゲルマニウムを黒鉛炉原子吸光法により定量する条件の検討を行った.孔径3μmの硝酸セルロ-ス製,ポリエ-テルサルホン製,硝酸セルロ-ス・酢酸セルロ-スの混合セルロ-ス製,PTFE製MFを用いた場合,ゲルマニウム0.1ー1.0μgを含む10mlの試料溶液から錯体を定量的に捕集できるが,再生セルロ-ス製,ポリカ-ボネ-ト製MFには定量的には捕集されなかった.MFの孔径が同程度であっても,その材質により錯体の捕集挙動が異なることが明かとなった.またゲルマニウムの黒鉛炉原子吸光測定において,マトリックスモディファイヤ-としてパラジウムをDMFに加えることにより,ゲルマニウムの原子吸光シグナルに約5倍の増感がみられ,メンブランフィルタ-捕集ー黒鉛炉原子吸光法によって極低濃度のゲルマニウムの定量が可能であることがわかった. フミン酸と重金属イオンとの錯形成に関しては,以下の知見が得られた.フミン酸の銅錯形成能力(条件安定度定数,錯化容量)が,イオン強度の増加にともない増加する.この要因を解明するため,電位差測定法によりフミン酸の見かけの酸解離定数(pKa')を測定し,pKa'がイオン強度の増加にともない小さくなることを明らかにした.この結果から,イオン強度の増加に伴う銅錯形成能力の増大はフミン酸の官能基の解離が促進されることに起因すると結論づけた.銅の陽極溶出ボルタンメトリ-において,フミン酸の電極表面への吸着がlabileな銅の測定を妨害する.この際,ドデシル硫酸ナトリウムを添加すると,フミン酸の吸着が防がれ,フミン酸共存下でのlabileな銅の定量が可能となり,フミン酸の銅錯形成能力の評価に適用することができた.この手法は高感度であり,試料が微少である場合極めて有用である.
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