研究概要 |
1.ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂(PCTFE)による鉄(II)のフェロジン錯体としての濃縮ー吸光光度定量:海水中のトレースレベルの鉄(II)の定量は困難な分析法の一つである。錯生成試薬であるフェロジンと鉄(II)の錯体のPCTFEへの吸着挙動について検討し,実試料に適用するための簡便な予備濃縮ー吸光光度法を確立した。Fe(II)-フェロジン錯体は,pH4.8〜7.0の溶液から樹脂に定量的に捕集された。PCTFEのカラムには,pH5.0で4〜25ml min^<-1>の流速で完全に捕集され,少量のメタノールによって容易に溶離された。樹脂の吸着容量は0.52μmolg^<-1>であった。本操作により,予めFe(2)を除去した海水にスパイクしたFe(II)の回収率は96%あった。本法を用いて能登九十九湾の海水中のFe(II)を測定し,0.87μgl^<-1>の値を得た。 2.ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂(PCTFE)によるコバルト(II)のニトロソR塩錯体としての濃縮ーK吸光光度定量:天然水中のトレースレベルのコバルト(II)の定量は,予備濃縮を必要とし,困難な分析法の一つである。コバルトの選択的な錯生成試薬であるニトロソR塩とコバルト(II)の錯体のPCTFEへの吸着挙動について研究し,迅速,簡便な予備濃縮ー吸光光度法を確立し,実試料に適用した。Co(II)ーニトロソR錯体は,9μmoll^<-1>のテトラブチルアンモニウムイオン(TBA^+)の存在下で,pH5.5〜9.5の溶液から樹脂に定量的に捕集され,PCTFEカラムには,pH6.5で6〜30ml min^<-1>の流速で完全に捕集され,3mlのメタノールによって定量的に溶離された。樹脂の吸着容量は,Co(II)濃度とともに増加し,約0.7μmolg^<-1>であった。また,3.5%の塩化ナトリウム溶液中では0.6μmolg^<-1>に低下した。本法を用いて兼六園を流れる辰己用水のCo(II)含量を測定して,1.5μgl^<-1>の値が得られた。
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