研究概要 |
水溶液における化学種の高選択的分離法の開発すなわち、高い選択性をもつ分子認識反応は、分析化学、地球化学の分野のみならず、核燃料処理、レアメタルなどの工業的分離、有害元素に対する治療薬、金属の関連する生体内反応といった広い分野での基本的な研究課題である。本研究におけるゲスト分子としては、各種金属イオンをはじめ、地球化学的に注目されている有機金属種、さらに生体反応に関連深い光学、構造異性体などの有機物質を対象にしている。そこで本年度は次に示すように、新しい分離試薬を合成し、これらと有機金属を含む金属種との錯生成反応および分離分析の研究を進めるとともに、多点相互作用を有するホストーゲスト分子系を探し出し、より選択性の高い反応系の開発とその分離機能を解明した。1.ピラゾ-ル環を含む新しい選択的キレ-ト試薬の開発。ホウ素にピラゾ-ル環の窒素原子が結合したリガンド、ポリピラゾリルボレ-トイオンは、六員環のキレ-ト環をもつNーN型リガンドで、きわめてリジッドでがっちりした配位空間を持つ。本年度はジヒドロビスピラゾリルボレ-トリガンドなど新奇なリガンドを合成し、金属とのキレ-ト化反応における立体的効果と抽出分離の研究を行った。一方O,Oー配位の高い抽出能をもつアシルピラゾロン類についてはこれらを2〜3ヶつないだリガンドを合成し、金属との配位における立体規制などを検討した。2.有機金属イオンの抽出分離。自然界で生成し、また人間が作り出したGe,As,Hg,Sn,Pbなどの有機金属種の自然界での循環が社会的にも問題になっている。本年度は有機ゲルマニウムの錯生成反応および抽出分離に関する研究を進め、またゲルマニウム化合物と同様自然界に有機金属化合物を容易に生成する各種有機ヒ素化合物の抽出分離と溶液内化学平衡の研究を進めた。3.多点相互作用を用いる選択的分離法の研究も進めた。
|