研究概要 |
新規フェニルアゾフェノール誘導体を設計合成した。4'-ニトロ;2',4'-ジニトロ;2',4',6'-トリニトロ誘導体22種を合成し,光吸収特性について検討した。試薬の陰イオンはメチルオレンジ系陰イオンとは逆に,疎水性場に移すことにより吸収は長波長側にシフトする。しかもモル吸光係数はメチルオレンジ系の数倍大きくなることが分かった。特にトリニトロ誘導体は波長シフト,モル吸光係数の変化が最も大い。基礎となる平衡論的考察はすべて終了した。紫外光照射による退色効果についても検討した。この退色はシス-トランス異性によるものと考えられ,トリ,ジ,モノニトロの順にシス異性体になり易いことが分った。これはアゾ基に対するsteric effectによるものと考えられる。 新規トリフェニルメタン系染料陰イオンを合成した。これらはベンゼン環にハロゲン置換基を6〜7個含むBenzaurin誘導体である。F-,C1-,Br-を持つものを合成した。中心炭素に近い位置に置換基を導入すると,アルカリ性(pH10)の水溶液でも非常に安定に存在することが実証された。これは中心炭素へのOH^-(又はH_2O)の接近が置換基により妨げられ,無色のカルビノール体をつくりにくいことによる。本試薬に関する平衡論的考察をおこなうと共にカルビノール体への変化の速度についても検討した。この種の試薬は非イオン性界面活性剤の共存下、pH3〜4で疎水性陽イオンとイオン会合し易い。この特性を利用すれば水溶液一相系での様々なイオン会合発色反応系を構築でき、分析化学的有用性は極めて大きい。 新規トリフェニルメタン系染料陽イオン五種を合成した。陰イオン染料と同様に,中心炭素近隣にハロゲン基の導入により,カルビノール体生成速度は非常に遅くなる。光吸収特性について検討すると共に,キノイド体,カルビノール体間のすべての平衡定数と速度定数を決定した。これらの結果を基に,水溶液でのヘテロポリ酸との発色反応に基づく高感度定量法の設計が可能となった。
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