研究概要 |
1.メトミオグロビンの還元反応におけるヘムプロピオン酸の役割ーヘムプロピオン酸のエステル化およびプロピオン酸を持たないオクタエチルヘミンの再構成ミオグロビンを用いることにより,(i)ヘムのポケット内での安定性の低下,(ii)ヘム鉄の電子密度の減少,(iii)酸化還元電位の正側へのシフト,(iv)還元反応速度の増加がみられた。一方,ミオグロビンの電子交換反応速度は天然のミオグロビンと同様に遅いことから,これらの修飾ミオグロビンは天然のミオグロビンと同様に第6配位子として水分子を持ち還元反応に伴う配位構造変化が反応速度を規制していることがわかった(論文1参照)。2.ビオロ-ゲンを修飾したミオグロビンの調製とその酸化還元挙動ーメトミオグロビンの表面に存在するリシン残基に1ーメチルー1'ーカルボキシメチルー4,4'ービピリジニウム過塩素酸塩/ジシクロヘキシルカ-ボジイミドを用いて修飾し,1:1型ビオロ-ゲン修飾ミオグロビンを調製した。亜二チオン酸ナトリウムによる還元反応は天然のメトミオグロビンより約1.5倍促進された。ビオロ-ゲン部分の還元反応に引き続いて,ビオロ-ゲンラジカルからへムへの速い分子内電子移動反応が起こっていることがわかった。今後,ビオロ-ゲン修飾ミオグロビンの異性体相互の分離とその収率の改善が必要である。3.一分子内に電子キャリア-を結合させたポルフィリンの合成と性質ーNーアルキルポルフィリンを用いてビオロ-ゲンを面上から結合させたテトラフェニルポルフィリンを合成し,その蛍光寿命が二成分となることがわかった。これは配向の異なる二つのコンフォ-マ-の存在によることが推定された(第41回錯体化学討論会発表)。4.亜鉛ポルフィリンを再構成させたミオグロビンの光誘起電子移動反応ー種々の消光剤を用いて亜鉛ミオグロビンの光誘起電子移動反応機構を解明した。特に,[Fe(CN)_6]^<3->を用いたときは会合錯体内での電子移動反応が観測された(論文2参照)。
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