研究概要 |
タイプIII銅タンパク質は特有の磁気的・分光学的・電気化学的性質を示すことはよく知られている。これ迄に上述の物理化学的性質の一つだけタイプIII銅と酷似の性質を示す複核銅(II)錯体は合成されている。しかし,すべての物理化学的性質がタイプIII銅と同じ性質をもつ錯体は皆無である。そこで,以下に記述したように系統的に錯体合成を行い,それらの性質を調べた結果を中心に報告したい。 (i)軟体動物のオキシヘモシアニン中の2個の銅(II)の周りの配位環境が等価でないて指摘されているので,それのモデル化として,一方の銅(II)にジアセチルモノオキシムと2ー(2ーアミノエチル)ピリジンとのシッフ塩基を他方の銅(II)には2,2'ービピリジルあるいは1,10ーフェナントロリンを含む混合配位子複核銅(II)錯体を合成した。銅(II)ー銅(II)間はオキシム状NーO^-とOH^-またはOAc^-で橋かけした錯体である。それらの磁気的・分光学的・電気化学的性質を調べた。その結果,とくにOH^-で橋かけした混合配位子錯体のなかに,2個の銅(II)イオン間に極めて強い反強磁性的相互作用を示す錯体種が得られた。これらの一部の内容は平成4年3月の第63春季年会で講演発表する。また,研究論文として投稿済みである。 (ii)主に,タイプIII銅タンパクの機能モデル錯体の開発を目ざすための準備として,各銅(II)にイミダゾ-ル窒素およびアミン窒素が結合し,銅(II)間をNCS^-,OH^-,Pz^-(ピラゾレ-ト),Im^-(イミダゾレ-ト)など各種の橋かけ配位子で橋かけした複核銅(II)錯体を合成した。これらの錯体は橋かけ配位子の種類によって物理化学的性質は大きく変ることが判明した。これらの結果の一部も研究論文として投稿準備中である。
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