研究概要 |
タイプIII銅タンパク質は特有の磁気的・分光学的・電気化学的性質を示すことはよく知られている。これらの特有の性質を示す複核銅錯体をモデルとして合成し、それらの構造・性質の関係を調べた。また、これらの錯体のなかに機能モデルとしての可能性を有する錯体も見出したので、それらの反応性についての検討を行った。 (i)モデル錯体として、以下の複核銅(II)錯体を合成した。すなわち、数種のカルボニル化合物と1,5-ジアミノペンタン-3-オールなどとのシッフ塩基配位子を含み、アルコール性酸素とピラゾレートなどで橋かけした複核銅(II)錯体である。これらのなかで、タイプIII銅タンパクの磁気的・分光学的性質にほぼ一到する錯体の合成ができた。その結果は、平成4年10月の錯体化学討論会で発表し、現在研究論文として投稿準備中である。 (ii)タイプIII銅タンパクの機能モデル錯体の開発を行っているが、その前段階として、イミダール基含有二核配位子を含み、ピラゾレートなどで橋かけした複核銅錯体を合成し、それらの物理化学的性質を調べた。その結果は現在研究論文として投稿中である。また、カテコールを配位した錯体を合成し、それを用いた機能モデル研究を進めている段階である。 (iii)軟体動物のオキシヘモシアニンの構造・物理化学的性質をモデル化した混合配位子複核銅(II)錯体の合成と性質・構造については、主に平成3年度に研究を行った。これらのなかに、タイプIII銅タンパクと同様に反磁性にかなり近い錯体を見出した。その結果は、平成4年11月に研究論文として発表済みである。今後、これらの錯体を用いた機能モデル錯体の開発も進めたい。
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