1.錯体触媒のX線構造解析。 力場計算法は経験的な方法であるから信頼性の高い計算を行うためには適切なパラメーターの設定が極めて重要である。この基礎データを集積する目的で、光学活性シッフ塩基配位子を含むマンガン(III)、コバルト(II)、およびオキソバナジウム(IV)錯体のX線構造解析を行った。 2.力場計算による立体構造解析。 1で構造解析を行った錯体について力場計算(MMP2)を行った。X線解析から求められた構造を力場計算からかなり良く再現できるようになった。しかし、詳細な議論のためには、いくつかのパラメーターの改良が必要であり、このため、現在、分子軌道計算も併せて行っている。 3.スルフィドの不斉酸化反応。 光学活性シッフ塩基配位子を含む錯体を触媒としてスルフィドの不斉酸化反応を行った。チタン(IV)錯体触媒を用いた研究から、フェニル基の配向が不斉選択性に大きく影響することが示唆された。そこで、1分子中に4個のフェニル基を有するシッフ塩基配位子を含むマンガン(III)錯体を合成し、不斉酸化反応を行ったが、生成したスルホキシドには予想外にも、殆ど不斉が誘導されなかった。関連した錯体を用いた触媒反応の結果から、高い不斉収率を達成するためには反応部位を立体的に、更に精密に制御する必要があることが明らかになった。
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