研究概要 |
平成3年度は岩石の流体包有物の流体細成と密度を決定することを目的とし,流体の移動にともなって周囲の葉石(チャノッカイト)や流体そのものにどの様な影響を与えるのか知るために,全岩および鉱物の同位体比(Rb/Sr,Sm/Nd)の変化を調べ,同位体比およびジルコンの分析から岩石の年代決定を試みた。また,流体包有物の研究はすでに学会報告したように,現在までに調査地域西部の剪断帯付近での分析が終了した。その結果,剪断帯付近の流体包有物の殆どが水に富むことが明らかになった。同様の分析を調査地域全体で実施することによって,リンポポ帯に関与した流体の広域的な組合変化を明らかにすることができる。 Rh/SrおよびSm/Nd同位体比については,筑波大学所有の固体質量分析計の使用が可能である。この装置によってすでに多数の同位体比が報告されており,分析もル-チン化されているため扱いが容易である。この方法と各鉱物の閉鎖温度を利用して,原岩の起源,変成作用の年代や上昇速度を推定する事が可能であり,流体が浸透した時期との時代的対比が期待される。 ジルコンの年代測定については,現在までに分析可能な装置はオ-ストラリア国立大学の分析機器のみであったが,現在筑波大学所有のイオンマイクロプロ-ブ(二次イオン質分析計)での測定が軌道に乗りつつあり,標準試料の入手が完了すれば分析が可能である。 以上の研究実績から,平成4年度ではリンポポ帯の変成作用から上昇までの時間,温度・圧力,流体組成の変化を見積もることが可能であり,リンポポ帯全域に見られるグラニュライトとチャノッカイトとの成因上の違いを明らかにすることができる。
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