研究概要 |
本年度は研究開始第1年目であるので,天然での鉱床の胚胎状態を,特に脈状鉱床およびポ-フィリ-カッパ-鉱床で観察し,試料の採取を行う一方,既存の質量分析器への水素同位体イオン検出装置の設置およびその試験,また水素ガスの発生・回収のための諸技術の修得および試料の最適条件の把握等の様々な準備段階をクリアすることを行った。その概要は以下の通りである。 1. ポ-フィリ-カッパ-鉱床については,すでに今井亮がかなりの試料を持っているので,この中より流体包有物を多数含有する石英細脈をもつ試料を選定した。すでに流体包有物の鏡下観察は終り,600゚Cに達する充填温度を示すものがある,塩濃度は極めて高くハライト結晶を包有しているものが多い等の結果を得ている。 2. 脈状鉱床の例として稼行中の串木野金・銀脈を研究対象とすることとし,清水正明が調査と試料採取を行った。本鉱床では脈際に熱水変質帯としてセリサイトが大量に生じている場合があり,これを用いれば流体包有物とは独立に鉱化流体の水素同位体比が求められ好都合である。このセリサイトについては島崎英彦がすでに加熱脱水法により水を分離して水素同位体比を測定し-60〜-70‰の値を得た.しかし石英中の流体包有物は本鉱床では極めて細粒で,水のとり出しにはまだ成功していない。 3. 流体包有物を含む石英を容器中で粉砕し,包有物中の流体をとり出すための最適方法を金田博彰が神岡スカルン鉱床の白地鉱の石英を用いて検討した。その結果粋砕前の試料調製段階では20〜40メッシュにそろえることが粋砕も容易でかつ流体の事前提出も少ないことが判明した。
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