研究概要 |
平成4年度には,分割円柱型アンビル・ガイドブロック装置を用いて,高圧珪酸塩鉱物の合成と高温高圧相平衡実験が行なわれた。 第一に,MgSiO_3ペロブスカイトが約12mg合成され,その熱容量が当教室の示差走査熱量計を用いて140〜295Kの範囲で測定された。Mgに富む(Mg,Fe)SiO_3ペロブスカイトは下部マントルの主要構成鉱物であり,従来全く測定されていなかったこの熱容量が今回初めて測定されたことの意義は大きい。この測定データとKiefferモデルによる理論計算とを合わせることにより,MgSiO_3ペロブスカイトのエントロピーが57.2J/mol・K(298Kでの値),デバイ温度が980Kと決められた。また30GPaでのグリュナイゼン定数が1.45と見積られ,これから下部マントル全体の断熱温度勾配が0.32±0.04K/kmと推定された。 またCaAl_2O_4-MgAl_2O_4系の高温高圧相平衡実験が上記の高圧装置を使って23GPaまでの圧力下で行なわれ,(Ca_<1-x>,Mgx)Al_2O_4(x=0〜0.2)組成のカルシウムフェライト固溶体が生成することが明らかになった。さらにほぼ(Ca_<0.3>Mg_<0.7>)Al_2O_4組成の新しい高圧相が15GPa以上の圧力で安定であり,六方晶系の格子をもつことが初めて明らかにされた。この相は,MORBの高圧実験で見出されたAlに富む構造未知の相と粉末×線パターンが酷似しており,下部マントル中に海洋地殻の沈み込みによって実際に存在する可能性が高い。 KAlSi_3O_8-NaAlSi_3O_8系の高温高圧相平衡実験も同じ高圧装置を用いて行なわれた。この結果(K_<1-x>Nax)AlSi_3O_8(x=0〜0.3)組成のホランダイト固溶体が15〜25GPaの圧力下で生成すること,この相が下部マントルにおけるKのホスト相として有力であることが明らかにされた。
|