研究概要 |
実験には,主として蛍石,方解石,バストネサイト,モナズ石,重晶石を用いた。初めに,各鉱物が単独で水中に存在する場合の液相性状を把握するため,種々のpHに調節した水溶液に各鉱物を懸濁し,懸濁液のpH経時変化を測定した。方解石を除く各鉱物の懸濁液のpHは,時間とともに一定の値に向って収束していき,この収束していくpH値は各鉱物に特有のものであった。一方,方解石の場合,懸濁液のpHは懸濁直後に鉱物一水系の平衡pH値に向って急激に変化し,その後ゆっくりと鉱物ー水ー大気系の平衡pH値に到達した。比較のため,菱マンガン鉱,毒重石などの6種類の炭酸塩鉱物についても検討し,溶解度積の大きい炭酸塩鉱物の場合,方解石に類似した挙動を示すことを見出した。また,顕微鏡電気泳動法によりゼ-タ電位を測定し,各鉱物の等電点を求めた。 次に,複数の鉱物が水中に共存する系における液相および界面性状について調べるため,蛍石と方解石が共存する系について懸濁液のpH経時変化,鉱物構成イオン濃度およびゼ-タ電位の測定を行った。いずれの測定値も両鉱物共存系と各鉱物単独系とで異なる値を示し,共存の影響が明らかに認められた。しかし,測定値から求めた蛍石,方解石の溶解度積の値は,共存系,単独系いずれの場合も文献値に近いか,その変動の幅の中にほぼ納まっており,共存系におけるイオンの溶出・吸着や沈殿生成などの現象は溶解度積の規制の下に進行した。pH8.4〜9.3以下の領域では,方解石表面においてFの吸着,あるいは液相中で生成したCaF_2の吸着が生じ,方解石表面は蛍石に似た性質を示した。 鉱物から溶出してきたイオンの影響をあまり受けない捕収剤を検索するため,各種界面活性剤と鉱物構成イオンとの反応性について調べ,上述の鉱物の優先浮選に適した性質を有する界面活性剤を見出した。
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