研究概要 |
昨年度、鉱物試料としてバストネサイト、モナザイト、蛍石、重晶石、方解石などの塩類鉱物を用いて研究し、複数塩類鉱物共存系におけるイオンの溶出・吸着や沈澱生成などの現象は溶解度積の規制の下に進行しており、液相条件により鉱物表面の性状や浮選挙動が共存相手鉱物に類似するようになることを報告した。従って、塩類鉱物の優先浮選においては、溶出イオンの影響をあまり受けないで、着目鉱物に選択的に作用する界面活性剤を捕収剤として用いることが望ましく、このような作用が期待できるものとしてオレイン酸サルコシン,sodium octadecylsulfosuccinamate、n-tallow-1,3-diaminopropane dioleateがあることを指摘した。そこで本年度は、これらの界面活性剤を用いる優先浮選について基礎的な検討を行った。本年度の研究で得られた主な成果は、以下のようである。 1.上述の3つの界面活性剤は、いずれも塩類鉱物の浮選に捕収剤として用いることができる。 2.n-tallow-1,3-diaminopropane dioleateは、浮選パルプ中の主要溶出イオンとの反応性に乏しく、塩類鉱物の優先浮選における捕収剤に適した性質を有している。 3.n-tallow-1,3-diaminopropane dioleateは両性界面活性剤であり、両性界面活性剤イオンとして存在する時、各鉱物の浮遊率は高い値を示す。この各塩類鉱物に対する吸着の機構は独特のものであり、浮選実験とζ電位測定の結果に基づき、新しい吸着モデルを見いだしている。 3.適切なn-tallow-1,3-diaminopropane dioleateの添加濃度、pHの下で浮選することにより、調節剤を併用しなくても、塩類鉱物相互の浮選分離が可能である。
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