研究概要 |
平成3年度では誘導発熱速度を考慮した半径方向一次元の伝熱解析により,スカル厚さを理論的に求め,さらに安定したスカルを形成させる操作条件として印加電流密度,周波数,冷却条件を見積もった.NaClとKClおよびCaF_2を模擬被融解物質として融解実験を行い,溶湯プール内では,電磁気力に比較して浮力が大きく,電磁撹拌は非常に小さいこと,溶湯上部には高温帯が,下部には低温帯が形成されることを明らかにした.NaClおよびKClを被融解物とした場合には下部低温帯形成に伴い凝固が進行したが凝固進行を防ぐために投入電力を増大すると上部においてスカルが融解し,溶湯とコイルとが接触し電気的に短絡することが分かった.NaClおよびKClの融解では,溶湯中での伝導伝熱速度に対する自然対流伝熱速度の比が大きいため上部に高温帯が形成され安定なスカルを形成することが困難であると考察した.この解決策として溶湯を機械的に撹拌する方法を提案し,それによって安定なスカル形成と共に溶湯の保持が可能であることを明らかにした. 平成4年度では,塩および酸化物の多くは固体状態では電気伝導度が低く誘導加熱されないが溶融状態では電気伝導度が高くなり誘導加熱が可能の予測に基づいて被融解物質中に複数の導電性の円柱を設置し,その誘導加熱を行った.昇温を可能とする円柱の直径と電気伝導度および電源の周波数の関係を求めた.またそのときの温度分布を理論的に導出し,解析結果と実験結果が良い一致を示すことを確認した.また3kHzの発振器では被融解物の自己誘導発熱は不可能でありこれら導電性発熱体の発熱によって融解させることが必要である.4MHzの発振器ではガラスおよび酸化物系融体の自己発熱による融解の確認をした.本年度はこれら得られた結果をまとめて学会に報告すると共に,報告書の作成を行った.
|