研究概要 |
本研究は機能材料,特に電子部品材料等の室内での微量腐食速度と腐食反応機構を調べるための新しい計測方法を開発することを目的とし,通常の溶液中での腐食研究とは異なった条件に対する測定法を確立しようとするものである。 本年度は (1)走査型非接触(Kelvin)電極装置の開発, (2)液膜組成の変化と酸素還元・腐食速度の関係, (3)液薄膜下腐食のインピーダンス特性について検討した。 (1)「走査型非接触(Kelvin)電極装置の開発」では,前年度の寄生容量に伴う測定誤差を積極的に利用し,測定時間を大幅に短縮し,試料表面の電位分布を非接触で測定する装置を開発した。予算の都合で手動による走査となったが,銅板に埋め込まれたアルミニュムなどの表面電位の相違を検出し,電位分布をマッピングすることができた。(「材料と環境」に投稿予定) (2)「液膜組成の変化と酸素還元・腐食速度の関係」では,Kelvin法による液薄膜殿強による測定において,液膜の厚さが減少するに伴って酸素の拡散限界電流は増加するが,その増加には限界があり,溶液組成に依存する電流値以上には増加しないことを見いだした。この現象は溶液への酸素の溶解度の減少と酸素還元に伴う電極近傍のpH増加による反応速度の減少により説明された。 (3)「液薄膜下腐食のインピーダンス特性」では,大気・室内腐食をシュミレートした湿潤・乾燥を繰り返すセルでの腐食のインピーダンス特性を測定するもので,腐食速度と液膜厚さ(溶液低抗)を同時にモニターすることができる。鉄および銅の大気腐食では液膜が乾燥する直前と乾燥から湿潤に移った直後の腐食速度が最も大きく,従来最も腐食速度が大きいとされていた1μmよりも10μm前後の液膜厚さで腐食速度が最も大きいことを見いだした。
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