研究概要 |
本年度は,測定装置の製作および高純度試料の合成を中心に研究を行った.具体的には以下のとおりである. .精密断熱型熱量計の製作:液体ヘリウム温度から室温にいたる温度範囲で,0.0001K程度の精度で断熱状態を維持できるクライオスタットを製作した.さらに,温度目盛を従来のIPTSー68から新しい国際温度目盛ITSー90に移行し,熱力学温度目盛に近い条件での測定を可能にした.2.誘電率測定装置の製作:液体窒素から約150℃の温度範囲で定速昇降温あるいは一定温度保持が可能なクライオスタットを製作し,種々の粒径のBaZnGeO_4試料について測定を開始した.3.高純度試料の合成および予備的実験:BaZnGeO_4については,直径0.2mm程度以上の結晶でのみ出現する最低温相(第6相)を経験した試料は,これまでの室温相(第3相)とは違った結晶構造となっていることをX線回折により見い出した.第3相は不整合相であり,最高温相(第1相)と比較するとc軸方向に約4倍の超周期構造をもち,a軸は√3になっているが,この新しい室温相は第1相c軸とほぼ等しいc軸長をもち,a軸が2倍の周期になっている構造であることが分かった.K_2ZnCl_4については,水溶液から析出させた単結晶中に残存している水が低温相転移に重大な影響をおよぼすことを見いだした.試料を乾燥させて水分を除くと,熱異常がブロ-ドな2つのピ-クからシャ-プな単一のピ-クになることが分かった.水溶液から得た単結晶について,乾燥の程度と相転移挙動の関連を定量的に調べるとともに,融体からの単結晶育成も試みている.不整合相をもつ分子結晶であるビス(4ークロロフェニル)スルホンについては熱容量測定を行い,148KにNーIC相転移が存在する事を見いだし,格子振動と不整合相発現機構について考察するとともに,ビフェニルなど一連のパラポリフェニル化合物などと比較検討した.ICーC相転移については熱異常が観測されず,試料の純度の面から検討を行っている.
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