研究概要 |
昨年度までにほぼ完成することができた精密断熱型熱量計および誘電率測定装置の最終的な動作テストを実行し,自動測定用プログラムの不備を修正した.とくに新しい国際温度目盛ITS-90の採用と空セル熱容量値の差し引き方法の合理化およびあらかじめ設定した昇温幅を実現するための印加電流および通電時間設定の自動化を完成することができた. BaZnGeO_4については溶融体から固化させて得た試料を用いてX線回折実験による構造解析を進めた.その結果新たに見い出した室温相の空間群はP6_3あるいはP6_3/mであり,これを出現させるには第5-6相転移を経過する必要があり,この前6相の副格子はP6_322であり,超格子はP6_122あるいはP6_522であることを示した.これらの新たに見い出した結晶相の出現条件を明確にし,相転移系列の全貌を明らかにすることができた.粒度効果についても第6相の構造から考察を進めた.また電子顕微鏡による第3相の特異な微細構造の観察についても進行することができた. K_2ZnCl_4については,水溶液から再結晶により良質の結晶試料を得ることができた.試料中に存在する微量の水分が相転移挙動を劇的に変化させる現象については,昨年度までに見い出した試料の粉砕脱気による相転移挙動の変化は,粉砕による力学的効果によるものではなく,水の脱着によるものであることが明らかとなった.すなわち乾燥と吸湿の過程およびそれによる相転移挙動の変化が可逆的であることについて,精密断熱型熱量計による熱容量測定により実証することができた
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