研究概要 |
高温超伝導酸化物を実用的な観点からみると、いかに高い臨界電流密度をもつ線材を開発するか、いかに安定した薄膜を形成させるか、などに注目がそそがれている。本研究は、高温超伝導酸化物の実用化の将来を考慮して、ジョセフィンソン素子などに用いられる高温超伝導酸化物薄膜の形成に適合する基板単結晶の探索を目的とする。現在、YBCO(YBa_2Cu_3O_7)およびBSCCO(Bi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_<10>,Bi_2Sr_2CaCu_2O_8)の高温超伝導酸化物薄膜の基板としてSrTiO_3やMgO単結晶が用いられている。しかし、これらの基板結晶と成膜との間には、結晶系の相違や格子定数のミスマッチなど構造上の問題や化学安定性の問題が存在する。本研究では、上述した結晶以外で化学的安定性に優れ構造上の問題のない新しい基板用単結晶を探索しようというものである。 平成3年度においては、高温超伝導酸化物の基本構造であるペロブスカイト型構造を有するBaTiO_3,SrTiO_3,CaTiO_3およびNdalO_3ーYAlO_3間での固溶体の単結晶をフロ-ティング・ゾ-ン法(FZ法)および溶媒移動フロ-ティング・ゾ-ン法(TSFZ法)により育成した。現在までに、Ba_<0.985>Sr_<0.015>TiO_3,Ba_<0.975>Sr_<0.025>TiO_3,NdAlO_3およびNd_<0.8>Y_<0.2>AlO_3組成の単結晶を育成した。チタン酸バリウム系では、いずれも立方晶系の単結晶がえられ、ネオジウム系では、ネオジウム単独のNdAlO_3は透明紫色の単結晶が育成されたが、転移双晶のドメインが観察され、Nd_<0.8>Y_<0.2>AlO_3固溶体単結晶ではドメインの大きさが小さくなる傾向がみられた。これら育成単結晶の格子定数,相転移温度および誘電的性質などを測定して基板結晶としての適合性を見きわめている。また、それらの固溶体以外のペロブスカイト型構造の酸化物単結晶を育成し基板用結晶としての可能性をも探索することも計画している。
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