研究概要 |
1.高温超伝導酸化物薄膜用の基板結晶として、現在はSrTiO_3,MgO単結晶などが用いられているが、格子定数などで最適な結晶ではない。本研究は、YBCOなど高温超伝導酸化物薄膜のための基板結晶として用いられているSrTiO_3の格子定数を変えて、より適切な基板結晶となる可能性のあるSr_<1-x>Ca_xTiO_3、Sr_<1-xo>Ba_xTiO_3およびNd_<1-x>Y_xAlO_3固溶体単結晶の育成を試み、置換イオンの濃度に伴う結晶性や構造の変化について検討した。Sr_<1-x>Ca_xTiO_3系およびSr_<1-xo>Ba_xTiO_3系いずれの系でも格子定数の減少が認められた。Sr_<1-x>Ca_xTiO_3系では、TSFZ法で育成速度1mmで育成した結果長さ25mm、径5mm大の淡黄色透明で四角柱状の結晶を得た。また、偏光顕微鏡観察により、5.2at.%Caの育成結晶は立方晶系から正方晶系の転移による転移双晶が観察された。Sr_<1-xo>Ba_xTiO_3系では、FZ法で育成速度1mmで育成した結果長さ30mm、径8mm大の淡黄色透明の単結晶が得られた。いずれの系の単結晶ではドメインが観察されたので、ドメインの対策を考えることが必要である。Nd_<1-x>Y_xAlO_3系では、x=0.3組成の紫色透明な単結晶を得た。結晶全体ではY分布は一様ではなかった。xを大きくすればよい結晶が得られことが判明した。 2.我々が育成した超伝導体のNd_<2-x>Ce_xCuO_4が基板結晶としての可能性を検討するために、エキシマレーザ蒸着法でYBCO薄膜を作製した。薄膜の評価から生成したYBCO薄膜は格子面間隔が3.82Aに対応するピークのみであるa軸配向薄膜であり、面内回転を測定した結果、b軸配向領域とc軸配向領域を含まないにa軸配向薄膜であった。このことは、b軸とc軸に格子整合するこの結晶系が基板結晶として適切なものであることを示唆している。
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