研究概要 |
酸化物薄膜のディップ・コ-ティング法の拡大のために、新しいアミノアルコキシドの合成とその性質について検討した。単純なアルコキシドが入手しにくいアルコキシドという点について注目し、特に後期遷移金属(クロム、鉄、ルテニウム及びコバルト)の2ー(ジメチルアミノ)エタノ-ル(DMAEーH)から誘導されるアミノエトキシドM(DMAE)_nについて検討した。さらに、これまでに報告しているエタノ-ルアミン法との関連についても調べた。 その結果、それぞれの金属について相当する目的化合物Cr(DMAE)_2(OH),Fe(DMAE)_3,Ru(DMAE)_2,Co_3(DMAE)_5(OH)_3Clが得られることが分かった。これらの化合物は一般の有機溶媒に可溶であり、また単純アルコキシドと比較して、加水分解性が小さくて取り扱いが容易であり、これらの溶液は相当する成分酸化物薄膜ディップ・コ-ティングの良い原料となることも分かった。コバルトの場合、還元雰囲気下で処理することにより、金属薄膜のコ-ティングも可能である。通常の単純アルコキシドでは熱的に不安定で単離が困難なルテニウム化合物も得られることから、このアミノアルコキシドの有用性が伺われる。しかし、単離された化合物は当初予想した構造とは異なり、一部加水分解を受けたと思われる構造をもつ。さらに、それらの溶液のゾルーゲル挙動は当初予想したものとも異なり、単純アルコキシドのものに類似し、他のトリエタノ-ルアミンなどの添加によって溶液はさらに安定になる。一方、Nーエチルジエタノ-ルアミン(EDEAー2H)のクロム誘導体"Cr_2(EDEA)_3"(この構造については未確定)は添加剤のない状態でも安定になり、2官能性アミノアルコキシドの効果が認められる。したがって、エタノ-ルアミン法で認められたエタノ-ルアミン類のアルコキシド安定化効果は、多価アルコ-ルのアミン誘導体という構造に関連することも分かった。
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