本研究の背景をなしている金属硫化物触媒のうち代表的なものはモリブデンの水溶性塩をコバルト塩とともにアルミナに含浸させ乾燥焼成したいわゆるCoOーMoO_3/Al_2O_3触媒である。この触媒は使用前に活性化のために硫化処理を施され、この処理によってCoとMoとが相互作用しながらある種の構造を形成していることが推定されている。この相互作用について以下の点を明らかにした。 (1)CoとMoを活性成分とする触媒を硫化後用いてベンゾチオフェンの水素化脱硫反応を水素気流中と硫化水素/水素混合気流中で行いその活性を比較検討したところ、水素気流中でより硫化水素/水素混合気流中での方がはるかに相互促進効果が大きいことが見いだされた。これは相互促進効果がCoとMoの両者の周囲の硫黄の配位状況に強く影響されていることを示唆する。 (2)硫化前の酸化物の状態でCoとMoがどの様に相互作用しているかを明らかにするため、焼成後の触媒を軽く(低温で)水素で還元してNOを吸着させてそのFTIR/DRAを測定した。その結果、CoOーMoO_3/Al_2O_3のMo点はMoO_3/Al_2O_3のMo点に比較して明らかに還元され難く、Coの酸化物とMoの酸化物が強く相互作用し合っていることが示唆された。このことから硫化物クラスタ-の前駆体としての酸化物の状態(硫化前)でCoとMoが相互作用していることが明らかになった。 (3)水素化脱硫反応における触媒活性の指標として一酸化窒素(NO)の吸着が適当であると提案されて久しいが、(1)の活性試験と(2)のNO吸着を組み合わせるとNOの吸着が水素化脱硫活性の必ずしも良い指標ではないことが推定された。
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