我々はこれまでの独自の分光学的手法を用いてコバルト/モリブデン系硫化物触媒の特徴を明らかにしており、金属硫化物の機能は基本的には、クラスターサイズ、中心金属の原子価と配位不飽和度、により決定されると推定している。本研究は各種の手法によりこれらを個別にコントロールし、高活性な水素化精製用触媒を設計する基礎資料を得ることを目的として遂行し、現在までに以下の主たる成果を得た。 CoとMoを活性成分とする触媒を用いて硫化後ベンゾチオフェンの水素化脱硫(HDS)反応を行い、特に硫化水素雰囲気下で、相互促進作用が大きいことを見い出した。また、NOをプローブとして触媒の表面状態を明らかにし、硫化前の酸化物の段階からこの相互作用が認められることを見い出した。 ゼオライトを特異な触媒調製の場として利用するために必要なモリブデンがカチオンとして存在する特殊なモリブデン2核錯体の調整に成功し、ゼオライトへのケージへの導入法に付いて検討した。触媒調製の各段階にあるCo-Mo触媒を各種分光法により観察し、硫化前に還元処理を施すことにより硫化段階でのMoS_2種の成長が妨げられていることを見い出した。 モリブデン2核錯体を用いたゼオライト担持触媒の調製に成功し、ゼオライトケージ中でMo-Mo結合を保っていることを明らかにした。本触媒は通常のMo/Al_2O_3触媒に比べ定常活性が低く、また、共存H_2Sの阻害効果が顕著に現れており、狭いゼオライトケージの中でMoS_2種の成長が妨げられていることが示唆された。コバルトとモリブデン双方に同時にキレートできるキレート剤を触媒前駆体の調製時に加えて調製したアルミナ担持触媒のHDS活性を調べたところ、Co-Moを同時に担持した際に顕著な添加効果が認められ、市販のCo-Mo/Al_2O_3よりも高い活性を示した。Co-Mo/Al_2O_3の妥当な活性点と考えられるCo-MoS相が選択的に、増加したものと考えられる。
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