チタンを含んだMFI構造のゼオライトTS-1を合成し、それを用いて、アルカン、アルケンの酸化反応を形状選択的に行わせることに成功した。ケイ酸およびチタン化合物を原料とし、水酸化テトラプロプルアンモニウムを細孔径調節剤として用い、オートクレーブ中、水熱合成により合成した、MFI構造を有するチタン含有ゼオライトのFT-IRでは960cm^<-1>にチタンの含有量に比例した強度の吸収が現れることを観察し、過酸化水素との反応で消失することから、Ti=Oの伸縮振動に帰属した。従来考えられていた構造よりも、Ti=Oを有し、Si-O-H基で囲まれた5〜6配位の構造が有力であるものと結論した。また、3700cm^<-1>付近の0-H伸縮振動がシリカライトに比べて数倍の強度を有することが観察された。 このチタノシリケートを触媒とし過酸化水素を酸化剤として、オレフィン、パラフィンの酸化を行なった。オレフィン、パラフィンの形状によって反応性が大きくことなることが分かった。すなわち、このゼオライトは直鎖炭化水素は効率よく酸化し、分枝、環状の酸化はほとんど起こさない特異な形状選択性を有することを見いだした。この選択性は細孔径と基質の分子径の大小関係に起因するものと考えられるが、吸着特性もこれを裏付ける。また、アルカン、アレーンの水酸化活性とTi=OのIR吸収強度によい相関を見いだし、Ti=Oが活性点であるものと推定した。しかし、アルケンのエポキシ化との相関はなかった。 MEL構造を有するゼオライトの合成にも成功した。反応性はMFI構造のものと類似した結果を示した。バナジウムを含むMFI、MEL構造のゼオライトの合成にも成功したが触媒活性は小さかった。ソーダライト型、Y型、モルデナイト型のゼオライトをつくることも試みたがアモルファスの生成物しか得られなかった。
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