ヘテロポリ酸擬液相反応場の動的解析と新規触媒反応の設計

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03453082
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 御園生 誠 東京大学, 工学部, 教授 (20011059)
• 研究分担者: 橋本 正人 東京大学, 工学部, 助手 (50237947) ; 奥原 敏夫 東京大学, 工学部, 助教授 (40133095)
• キーワード: 擬液相 / ヘテロポリ酸 / 固体酸触媒 / 固体NMR / アルチル化反応 / ピナコール転位反応 / エタノール脱水反応 / 部分酸性塩

研究概要

本研究は、固体酸触媒として優れた機能をもつヘテロポリ酸の触媒機能発現機構の解明のため、特にこの触媒に特有の現象である「擬液相挙動」に焦点をあて、触媒バルク中での極性有機分子の挙動を明らかにすることを目的とした。本年度は、ヘテロポリ酸H_3PW_<12>O_<40>及びそのCs部分酸性塩について、粒子構造のX線及び固体^<31>P-NMRによる検討を行ない、さらに極性有機分子を取り込んだヘテロポリ酸の単結晶による構造決定を行なった。
まず、酸型の無水物と6水和物、及びCs部分酸性塩の粉末X線回折法による結晶構造の比較検討の結果、それぞれの回折パターンがほぼ一致することから、いずれの触媒においても基本的な構造は同じであることが明らかになった。これらのうちでは酸型の6水和物の構造が知られており、その立方格子中でポリアニオンが体心で配置し、その隙間にヒドロニウムイオンが存在している。酸型無水物ではプロトンがポリアニオンに直接配位しており、また、Cs部分酸性塩ではヒドロニウムイオンの位置にCs^+が存在している。これらの触媒中のポリアニオンとプロトンの存在状態を固体^<31>P-NMRで解析した。ポリ酸の中心原子(ヘテロ原子)であるリンの化学シフトがポリアニオンに結合しているプロトンの数で支配されることがわかった。酸型無水物ではポリアニオンに3つのプロトンが配位していることを裏付けるとともに、部分酸性塩(CsH_2、Cs_2H、Cs_<2.5>)ではプロトンがポリアニオンに統計分布していることが証明された。また、極性有機分子としてピリジンを用いたときに6ピリジニウム塩〔(C_5H_5N)_2H〕_3PW_<12>O_<40>が単結晶で得られ、各プロトンに2個ずつのピリジンが配位した構造であることがわかった。酸型のポリ酸へのピリジン吸着でも同様の化合物が得られることから、擬液相における有機分子の状態が構造的にも確認された。

研究成果

• [文献書誌] Toru NISHIMURA: "High Catalytic Activity of an Insuluble Acidic Caecium Sult of Dodecatunystophosphoic Acid for Liguid Phase Alkylation" Applied Catalysis. 73. L7-L11 (1991)
• [文献書誌] Makoto MISONO: "Surface-and Bulk-Type Catalysis of Hcteropolymolyfdute.Importanc of the Concept in the Structure-Activity Relationships for Catalyst Design" Stud.Surt.Sci.Catal.66. 87-97 (1991)
• [文献書誌] 水野 哲孝: "ヘテロポリ化合物を解媒とするシクロヘキセンの過酸化水素酸化" 日本化学会誌. 1066-1072 (1991)
• [文献書誌] Toru NISHIMURA: "High Catalytic Activityes of Psendoliquid Phase of Dodecaturystophosphoric Acid for Reactions of Polar Molecules" Chemistry Letters. 1695-1698 (1991)
• [文献書誌] Hiro-o MORI: "Factors Controlling the Selectivity of the Onidation of Acetaldehyde over Heteropoly Compounds." Journal of Catalysis. 131. 133-142 (1991)
• [文献書誌] 西村 徹: "液相系酸触媒反応における固体ヘテロポリ化合物の特異性" 触媒. 33. 420-423 (1991)
• [文献書誌] Makoto MISONO: "Heterogeneous Catalysis by Heteropoly Compounds.An Attempt of Molecular Design of Practical Solid Acid Catalysts" Catalysis Lettens. 12. 63-72 (1992)
• [文献書誌] Kwan Young LEE: "Catalysis by Heteropoly Compounds.20.An NMR Study of Ethanol Dehydration in the Pseudoliquid Phase of 12-Tungstophosponc Acid." Journal of American Chemical Society. 114. 2836-2842 (1992)
• [文献書誌] 御園生 誠: "ポリ酸触媒を用いた有機合成の展望" 触媒. 34. 152-158 (1992)
• [文献書誌] Toshio OKUHARA: "Insoluble Heteropoly Compounds as Highly Active Catalysts for Liquid Phase Reactions" Journal of Molecular Catalysis. 74. 247-256 (1992)
• [文献書誌] 奥原 敏夫: "ヘテロポリ酸の基本触媒機能と、有機合成反応への応用" 有機合成化学協会誌. 51. 128-140 (1993)
• [文献書誌] Makoto MISONO: "New Catalytic Aspects of Heteropolyacids and Related Compounds -To the.Molecular Design of Practical Catalysis" Proceedings of 10th International Congress on Catalysis.