本研究では好熱性水素酸化細菌Bacillus schlegelii中で電子伝達体として機能していると考えられるフェレドキシンおよび水素の吸収発生を触媒するヒドロゲナーゼを単離精製し、それらの性質を調べた。本フェレドキシンは77アミノ酸残基よりなり、その分子中に3核および4核の鉄硫黄クラスターを各1分子ずつ含んでいる7鉄型フェレドキシンであることがわかった。そのアミノ酸配列は、これ迄に報告されている他の7鉄型フェレドキシンと高い相同性を示した。本フェレドキシンは、NADPH、FNRによるチトクロームc還元反応系において効率的な電子伝達体として機能することがわかった。フェレドキシンの電子伝達体活性は、フェレドキシンを熱処理することにより一度上昇する。これは、熱処理によりフェレドキシン中の4核鉄硫黄クラスターが3核鉄硫黄クラスターへ構造変化するためであることがわかった。さらに熱処理を続けると、電子伝達体活性は次第に低下する。これは、フェレドキシン分子中の3核鉄硫黄クラスターが分解してしまうためである。本反応における電子伝達体活性には、フェレドキシン分子中の3核鉄硫黄クラスターのみが関与しており、4核鉄硫黄クラスターは反応に関与していない。これは、4核鉄硫黄クラスターの酸化還元電位が非常に低いため、本反応系においては4核鉄硫黄クラスターを還元できないためであると考えられる。 Bacillus schlegeliiより精製したヒドロゲナーゼは水素吸収反応を優先的に触媒するアップテイク型ヒドロゲナーゼであった。本酵素は70度で5時間あるいは、80度で2.5時間熱処理した後でも、熱処理前の約50%の活性を有していた。このことから本酵素が非常に高い熱安定性を有していることがわかった。
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