研究概要 |
極低温固体において水素原子・分子トンネル反応に対する回転量子状態(J=0,1)の効果を調べた。4.2KでH原子の減衰速度はp-H_2中ではn-_2中よりも速いことが観測された。H原子のESRスペクトルにおいて二本の各主線は二つのスピン・フリップ線を伴っている。主線の幅はn-H_2では0.38G,p-H_2中では0.11Gであった。水素同位体中に生成したH(D)原子のESRスペクトルのうち、H_2中のH原子の線幅は非常に狭い。線幅の実測値と理論値の比較からHD及びD_2中のH及びD原子は格子間8面体サイトに捕捉されるが、H_2中のH原子は置換型サイトに捕捉される。 固体水素中の反跳トリチウムの反応を研究するため中性子照射を4.2Kで行った。固体H_2-D_2混合物の反跳トリチウムとの反応によって生成するHTとDTの全収率に対するHTの割合は混合物中のH_2の比率にほぼ等しい。HT及びDTは主としてT原子によるH_2及びD_2からの水素原子引き抜きによって生成する。4.2K固体水素中では90%以上がホット原子として水素と反応する。 電子線パルス放射線分解によって生成する溶質ベンゼンのアニオンへのエタノールからのプロトン移行反応を研究した。4.2Kではプロトン移行反応は起らず、ベンゼン・アニオンがESRにより検出された。77Kに昇温するとベンゼン・アニオンはシクロヘキサジェニルに変化した。このプロトン移行反応に対する温度効果を20-120Kで調べた。電子線照射した極低温氷からの発光を77K以下の温度で研究した。330nmに新しい発光帯を観測し、これは30K以下では温度の低下と共に急激に増加することを見い出した。40K以上では從来知られている380nmの発光帯を観測した。
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