可燃物の燃焼から新たな有害性物質として、高反応性であるにもかかわらず見かけ上長寿命の酸素中心気相ラジカルの生成が報告されているが、その発生機構をESRスピントラッピング法を用いて調べ、また、その抑制法について検討した。まず、燃焼実験装置を用いて、各種可燃性物質について燃焼実験を行い、ESRを用いて気相ラジカル解析を行なうことにより、気相ラジカル発生挙動に及ぼす基質の影響を明らかにした。また、気相ラジカル生成に及ぼす燃焼条件の検討を行なうため、電気炉温度を300℃〜1000℃、酸素濃度を0〜20%の範囲で変えてラジカル生成挙動を観察した。その結果、代表的可燃物であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)について炉温800℃で気相ラジカル量が最大になり、酸素濃度に対しては炉温600℃で4〜8%、炉温800℃で8〜12%でラジカル生成量が最大になることがわかった。さらに、FTーIRを用いた燃焼生成物分析により気相ラジカル発生挙動の検討を行ない、加熱温度を変化させた場合の燃焼生成物と気相ラジカル濃度の関係についての知見を得た。今後は燃焼生成物の詳細な検討を行なう予定である。さらに、代表的可燃物について種々の条件下で熱分解を行い、FTーIRで生成物分析を、ESRで気相ラジカル解析を行い、気相ラジカル発生機構に関する検討を行なっている。 可燃物の燃焼スモ-クが生体膜の重要な構成物質であるリノ-ル酸メチルの自動酸化を引き起こす可能性を酸素吸収法により検討し、気相ラジカルが生体に有害な過酸化脂質を生成する可能性があることを見いだした。また、可燃物の燃焼から生成する気相ラジカルの抑制法の検討のため、可燃物に添加物を加えて燃焼させ、あるいはスピン付加物に添加剤を加え、ESRでラジカル生成挙動を観察し、ハロゲン化水素などに抑制効果があることを見出した。
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