研究概要 |
本研究では配位不飽和種を容易に生成すると考えれらる7および8族遷移金属錯体を合成単離し、これらと種々の置換オレフィンや活性水素化合物との反応を検討することにより、官能基をもつ有機化合物のC-H結合の選択的活性化について明らかにした。まず、出発物質として、ReH(C_2H_4)_2(PMe_2Ph)_3、(1)、ReH(N_2)(PMe_2Ph)_4、(2)、〔MnMe_2(dmpe)_2〕^+〔Alme_4〕^-、(3)、〔Mn-Me_2(dmpe)_2〕^+〔BPh_4〕^-、(4)、RuH_2(PPh_3)_4、(5)、Ru(C_2H_4)(PPh_3)_3、(6)、Fe(N_2)(depe)_2、(7)、を合成単離した。錯体2、5または6と活性水素化合物との反応ではエノラートアニオンが金属に配位した錯体を単離した。シアノ酢酸エステルから誘導されるエノラート錯体では、エノラートがシアノ基で金属に配位しており、温和な条件下でアルデヒドやアクリロニトリルと容易に反応し、それぞれアルドール型およびマイケル付加型生成物を与えた。これに対し、2,4-ペンタンジオン由来のエノラート錯体は反応性が低く安定であった。錯体2,5,6,エノラート錯体およびRu(Cod)(cot)1dep系はシアノ酢酸エステルとアルデヒドとのアルドール型反応およびマクリロニトリルとのマイケル型反応の良好な触媒となった。これらの結果は、本研究で単離された錯体がこれらの触媒反応の活性中間体であることを示しているとともに、その基賃選択性を裏付けるものである。 錯体5または6と不飽和カルボン酸エステルとの反応ではSp^2性およびSp^3性のC-H結合の選択的切断が起き、酸化的付加生成物であるヒドリドアルケニルおよびヒドリドアリル型の錯体が得られた。後者ではさらにαアリル中間体を経てジエン型の錯体が生成した。これらの錯体の生成に関する位置選択性は生成物の熱力学的安定性に強く依存した。また、レニウム錯体によるα-シアノケイ皮酸エステルとテトラシアノエチレンとのオレフィンメタセシス反応が見い出された。
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