研究概要 |
高度にかさ高い有機アルミニウム反応剤、MADを部分構造とする有機溶媒に難溶な高分子有機アルミニウム化合物をかさ高いトリフェノールから調製し、液体カラムクロマトグラフィーの固定相とする複合体形成クロマトグラフィーを開発したが、このものは、反応の後処理や生成物の分離・精製が不要あるいは極めて容易な流通系リアクターとして有機合成に適用できることを見いだした。すなわち、複合体形成クロマトグラフィーに用いた高分子有機アルミニウム固定相をエポキシ化合物からカルボニル化合物への転位触媒として適用したところ、室温下、短時間で目的のカルボニル化合物を良好な収率で得ることができた。この際、副生成物は有機アルミニウム固定相に強く配位して、流出溶媒(ヘキサン)ではほとんど流出しないことがわかった。続いて、これらの知見をもとに光学活性アルミニウム反応剤を用いる不斉分子認識に取り掛かった。まず、MADタイプの光学活性アルミニウム反応剤として、光学活性ビナフトールを配位子に持つ化合物を選んだ。MADの際だった特徴と光学活性ビナフトールの構造を組み合わせるとき、3,3'位に大きな置換基を持つビナフトールがアルミニウムのリガンドとして適切であると思われる。この置換基の大きさを自由に変えることによって、アルミニウム近傍の活性部位の大きさや形を自由に変えることができる。そこで、種々の置換基の導入を試みたのち、最終的にはブロモビナフトールのビス・シリルエーテルの分子内[1.2]転位を用いた方法でビナフトールの3,3'位への大きなシリル置換基の導入が可能となり、ほぼ満足できる光学活性配位子の合成法を確立できた。この光学活性ジシリルビナフトールを配位子とする光学活性アルミニウム反応剤は、アリルビニルエーテルの不斉クライゼン転位、不飽和エステルとジエンの不斉ディールズ・アルダー反応に極めて有効であることが見いだされた。
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