研究概要 |
本年度は2年計画の初年度にあたり、設定した次の3件の課題に関して基本的な検討を行った。結果の概要を示す。 1,スズエノラ-トとαーハロケトンとの反応制御 スズに対する配位子としてのHMPAやBu_4NB_xを基質に対して等モル以上を用いる方法でスズエノラ-トの反応性をコントロ-ルすると、ハロケトンのハライド炭素での置換反応がおこり1.4ージケトンが選択的に得られた。これに対して、Bu_3SnX(X:ハロゲン)と上記の配位子とから容易に合成できる錯体を触媒量用いると、主生成物はオキシランに変った。この変化は一般的であることを種々の基質で確認した。次年度は、この変化の原因を探究し、新しい反応開発の手段とする予定である。 2.ジアリルスズとカルボニル化合物との反応 モノアリルスズ(Bu_3Sn〓)と比較して反応性が高いと予想されるジアリルスズ(Bu_2Sn(〓)_2)の簡便な合成法の確立を基に、カルボニル化合物との反応を目的としてこの反応に対し(1)と同様に配位子の添加を試みたところ、EtaNClが触媒量で高い活性を示すことを見出した。この方法を、αーハロケトンとの反応に適用したところ、高収率でアリルオキシランが得られた。 3,スズヒドリド錯体による還元反応…エポキシケトンの還元 Bu_3SnHをBu_4NFに代表される4級オニウムハライドで錯体化すると、エポキシケトンのカルボニル基が官能基選択的に還元され、生成物はシン選択的となる。これに対してBu_2SnF_2で系中でBu_2SnHFを発生させると反応はアンチ選択的となる。一方、Bu_2SnH_2錯体によれば、オキシラン環のみの還元開裂が可能となる。 以上のように、錯体化手法が有効な合成手段となることが基本的に明らかとなった。次年度は詳細な検討を行う予定である。
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