研究概要 |
直径が10〜15μmの単繊維の異方性力学特性を直接観測するため,繊維軸方向,同直角方回,ねじりによるせん断の各弾性率,ならびに2方向のポアソン比,計5種の異方性力学物性を測定する装置を完成させ,測定を開始した。まずアラミド繊維を中心に炭素繊維など、各種高強度繊維の力学異方性が明らかになり、さらに専用の衣料用繊維についても測定を始め、現在多くのデ-タを得っっある。成果の主なものを下記する。 (1)分子または結晶が高度に配向した高強度繊維では織維軸方回の弾性率に対し、直角方向弾性率は約1/30〜1/50であり極めて低い。 (2)アラミド繊維など有機繊維は繊維軸に直角方向には強い塑性を示す。これが繊維に曲げ、またはせん断の変形に対して靭性を付与する原因となっている。しかし疲労現象がこの方回に生じやすい。 (3)ねじり(せん断変形)疲労における、ひずみ振幅と繰返し疲労回数との間に相互換算が可能であることを発見した。これによって長期使用時の破断予測が可能になった。 (4)繊維軸に沿っての圧縮挙動の観測が可能になった。観測によると引張強度に比較して高配句繊維では圧縮強度が極端に弱い。引張強度の1/10以下、アラミド繊維では1/50に達する。この循応力で破壊または降伏してしまう。本研究デ-タにによりこれら高性能繊維の応用上有用な知見が得られた。 (5)衣料用のポリエステル,羊毛、ナイロンなど各種繊維についても測定を始めた。 (6)以上の繊維の各物性が布の物性にどのように反映するかについての理論的考察を深めた。
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