研究概要 |
高性能繊維の力学特性を単繊維について精密に測定するシステムがこの研究の実績の一つとして完成し、多くの測定を実施してきた。特に本年度はこの測定を粘弾性測定に拡大したこと、強度、疲労の研究へ拡大したことが大きな成果であった。以下のここが明らかになった。 (1) アラミド繊維を対象として異方性粘弾性,特にクリープ測定を繊維軸方向,それに直角方向,ねじりによるせん断方向の各方向について実施し、クリープの量はもちろん繊維軸方向は小さく、他の方向は大きいことが定量的に測定されたが、新しい知見は、これら3方向のクリープをもたらす根源は同一であり、恐らく無定形部分の粘弾性挙動であろうと思われることで、これは時間ー温度重ね合せのさいのシフトフアクターがいずれの方向も共通して同じであることから推論される。 (2)高性能繊維の弱い方向、すなわち繊維軸に直角方向,およびねじりによってもたらされるせん断の各変形に対して繰返し荷重の印加により疲労現象が測定される。せん断変形をくり返すとせん断弾性率Gはくり返し回数と共に顕著に低下を示す。この現象の一連の研究を実施したところ、一つの法則が見出された。すなわち、ひずみ振中とくり返し回数とは相互に等価変換が可能なこと、換言すれば、ひずみの振中を増加させると一定のGの低下をもたらすくり返し回数は低下するか、この両者の間に深い関係があることである。これによって疲労寿命の予測の万能性が生れてきた。この関係は繊維の種類を広げ、ポリエステルなど他の結晶性高分子についても成り立つことが新たに明らかになった。
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