直径が10〜15μmの単繊維の力学特性は強い異方性を示し、その方向によって強度も大きく変る。この性質の精密な測定は繊維の寸法からこれまで直接測定は不可能であった。しかし高強度繊維の宇宙航空機器への応用、特に複合材料の分野への応用に関し、詳細な測定が必要になった。また高度の配向をもつ高分子の性質研究のうえでもこの測定は強く要請されていた。本研究では科学研究費の補助を得てその測定システムを完成した。すなわち(1)精密繊維軸方向引張特性試験株、(2)同じく繊維軸方向圧縮試験株、(3)繊維軸直角方向への圧縮試験株、(4)ねじり試験株、(5)ポアソン比測定株で、このうち(2)は単繊維に代ってマイクロマンポジット法を採用したが、他はすべて単繊維の直接測定方式であり、装置は0.1μmの分解能をもつ。これらを用いて、アラニド繊維ほか、各種繊維の異方性特性の測定を実施し、多くのデータを得ることができた。特に新しく興味ある知見は下記のとおりである。 (1)引張特性と圧縮特性が繊維軸方向についてはじめて連結され、繊維軸方向の繊維の特性が全体にわたって、すなわち引張から圧縮まで明らかになった。高強度繊維が圧縮に弱いことが始めて明僚に応力一ひろげ曲線上に描かれた。 (2)繊維がねじりに、すなわちせん断応力に極めて弱く、破壊がこれの原因で生じ繊維切断が生じることが明らかになった。 (3)ねじり疲労について予測式が完成した。 (4)異方性の粘弾性特性についても測定が行われ、多くの知見が得られた。
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