研究概要 |
1.超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)の分離条件を最適化することにより,立体特異性リビング重合で合成した平均重合度67のイソタクチックポリメタクリル酸メチル(PMMA)から,100量体(分子量10,070)までのオリゴマーをそれぞれ純粋に単離することができた。重合度分布を持たず,重合度が50を超えるオリゴマーとしては,直鎖アルカンとオリゴオキシエチレンに次いで3番目の例になる。平均重合度41のシンジオタクチックPMMAからは,50量体までをそれぞれ数十ミリグラム単位で単離できた。 2.1.で得られた50量体までのオリゴマーの溶液中からの結晶化を試みたが,単結晶を得るには至らなかった。立体異性体の精製や結晶化の条件等について,次年度も検討を続けたい。一方,イソタクチック体,シンジオタクチック体の各重合度のオリゴマーを固相で熱処理することにより,明暸なガラス転移を示す非晶質の試料を得ることができた。示差熱分析の結果,これら重合度分布を持たない試料のガラス転移温度は,重合度分布を有するPMMAのそれより最大7℃程度高かった。 3.t-BuOLiを開始剤としてクロラールのオリゴメリ化反応を行い,末端を無水酢酸でエンドキャップしてイソタクチックオリゴマーを得た。このオリゴマーは,不斉炭素の絶対配置が全てRの異性体と全てSの異性体の等量混合物である。セルロース誘導体を固定相とする高速液体クロマトグラフィーにより,2〜9量体をそれぞれ光学分割することができた。5量体の純粋な(+)体と(-)体のCDスペクトルは,両者が対掌的ならせん構造を有することを示唆したが,旋光度の絶対値は24°(クロロホルム中,Na-D線)程度であり,不斉重合で得られたポリクロラールフィルムの値(1000°以上)に比べて小さかった。X線結晶解析の結果,(-)体がR体であることがわかった。
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