研究概要 |
1.メタクリル酸メチル(MMA)の立体特異性リビング重合により、開始末端から停止末端まで高度にイソタクチック(it-)または高度にシンジオタクチック(st-)なオリゴマーを得た。 2.超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)による上記のオリゴマーの分離条件を検討した結果、分子量分布を持たない10量体〜100量体(分子量10,070)をそれぞれ数十ミリグラムずつ単離することに成功した。 3.MMAの19〜50量体のガラス転移温度を測定し、it-体およびst-体のそれぞれについて、その重合度依存性を明らかにした。31量体以上のit-体は適当な熱処理により結晶化し、分子量分布を有する試料に比べて鋭い融点を示した。4および5量体については単結晶が得られ、X線解析によりその構造を明らかにした。 4.MMAのit-50量体とst-50量体を混合してGPC分析を行うと、ステレオコンプレックスによる幅の狭い溶出帯が現れることを見出した。この現象をもとに、コンプレックスの構造と組成に関する知見を得た。 5.金属アルコキシドを開始剤とするクロラールのオリゴメリ化を行った。3量体以上では純粋なインタクチック体のみが立体特異的に生成しており、その9量体までをGPCまたはSFCを用いて単離した。開始末端にt-ブチル基、停止末端にアセチル基を有するイソタクチック体はHPLCにより光学分割でき、(-)-5量体(比旋光度-23.7°)は右巻の4/1らせん構造を有する(R,R,R,R,R)-体であることがX線解析で明らかになった。 6.両末端にメチル基を有するクロラールの7および8量体は、らせん構造に基づくコンホメーション不斉によって光学分割できることがわかった。これらのオリゴマーのNMRスペクトルの温度変化から、一方向巻らせん構造の動力学的・熱力学的安定性、ならびに、重合度および末端基の影響を、定量的に解明した。
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