研究概要 |
(1) 好熱性菌の細胞膜脂質を参考として, 1,1'ー(1,32ーdotriacontamethylene)bis(2ーphytanylーsnーglyceroー3ーphosphoethanolamine)[I], 1,2ーdiphytanylーsnーglyceroー3ーphosphocholine[II],および1,2ーdiphytanylーsnーglyceroー3ーphosphate[III]を合成した. (2) これらの脂質の内,2つのホスホエタノ-ルアミン極性基を持つIは脂質膜を形成しなかったが,IIおよびIIIは超音波処理により膜で囲まれた小胞(リポソ-ム)を与え,その水分散物は非常に安定であり,高い濃度(5モル)の食塩水中でも形態を保つことが分かった. (3) また,上記リポソ-ムはその内部に無機塩,染料分子,蛋白質を低温から高温に至る広い温度範囲(0〜70℃)で保持することを確認した. (4) 以上の好熱性菌の細胞膜脂質膜の特徴に対し,一般の生物の細胞膜脂質,例えば1,2ーdipalmitoylーsnーglyceroー3ーphosphocholine,から成るリポソ-ムは食塩水中では溶易に破壊され,また,30ー40℃以上の温度域では物質の保持能力を欠いていた. 結論として,本研究課題(平成3年度)での好熱性菌の細胞膜脂質から調製された脂質膜は耐熱性のみならず,耐塩性にも優れていた.新規の生体材料として医療分野などでの応用が期待される.
|