研究概要 |
好熱性菌の膜脂質モデルとして1,2-ジフィタニルグリセロ-3-ホスホコリン(DPhyPC)および1,2-ジフィタニルグリセロ-3-ホスフェート(DPhyPA)を化学合成した.これらは次の性質を示した. (1) DPhyPCを水に分散し室温で超音波を照射したところ直径300〜800オングストロームで膜厚約80オングストロームの一枚膜リポソームが得られた.本リポソームは少なくとも1か月形態を変えることなく非常に安定で5モルもの高濃度の食塩水中でも崩壊しなかった.また,内部の水層にカルボキシフルオレセインなどの染料を70度もの高温でも保持できることが分かった.これらの性質は従来の脂質から成るリポソームでは見られなかったことである.一方, (2) DPhyPCを同じく超音波処理し,その耐酸性をプロトンに対する透過性より検討した.すなわち,リポソーム内部はアスパラギン酸緩衝液(pH4)とし,外部は緩衝能のないpH7の水溶液とした.このリポソーム分散液を一定温度に保ち,外部のpHの時間変化を電極で記録して,透過度を推定した.その結果,通常生物の脂質から成るリポソーム膜に比べて3〜7分の1であることが分かった.また,酸性,アルカリ性の溶液中でも長期にわたり加水分解されることなく安定であることも明らかとなった. 以上のように,本研究課題の目的にほぼ達成し,耐熱性ばかりか耐酸性にも優れた脂質膜を得ることができた.
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