研究概要 |
本年度は太陽光のモデル光源として平板バックライト光源、蛍光灯光源を用いて緑藻クロレラの回分培養実験を行った。 各種色素の濃度は、積分球を組み込んだ分光光度計を使用し細胞懸濁液の吸収スペクトルを測定し、色素の吸収ピークにおける吸光度により比較検討した。また、バイオマス量の定量にあたり、クロロフィルaの吸収ピークである680nmにおける吸光度と共に、細胞懸濁液の濁度として780nmにおける吸光度を測定し、乾燥重量との相関をそれぞれ求めた結果、クロロフィルaよりも濁度の方が乾燥重量を表す指標としてより適切であることが確認された。 操作因子として光強度を1,000〜11,000 luxまで種々変化させ光培養を行い、光強度の増殖速度および細胞色素組成に及ぼす影響を考察した。その結果、濁度の経時変化における最大値には光強度による差がほとんど見られないが、クロロフィルaの最大値は光強度が大きくなるほど減少することより、短期間に効率よくクロロフィルaを得るためには光強度に最適値が存在し、本実験ではその値は5,000 luxであることがわかった。また、クロロフィルa、濁度、細胞数の経時変化の比較より、クロロフィルaの増加が細胞分裂の進行の程度を、濁度の増加が細胞増殖の進行の程度をそれぞれ表す指標となり得ることがわかった。 光強度が大きいほど、強光への適応によって、クロロフィルa、b、カロチノイドなどの各種光合成色素の細胞内含有量は減少し、一方でクロロフィルaに対する集光性色素であるクロロフィルb、カロチノイドの比率は増加することより、クロレラの光適応は、主にクロロフィルaの増減によって行われることがわかった。 光強度が小さいほど、弱光適応によって各種光合成色素の含有率が増加し、細胞が大型化し、細胞個数の最大値が低下することがわかった。
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