研究概要 |
生体の体内動態に基づく信号(温度,化学物質,pH等の物理化学的変化)に応答して、必要な量の薬物(あるいは情報伝達物質)を必要な時にのみ放出する自己制御型薬物放出システムの応答制御方法の確立を目的としてシステム(1);物理化学的制御法,システム(2);電気化学的制御法の2面から検討した。システム(1)では、N-イソプロピルアクリルアミドゲルの物理的な網目構造の制御(ラジカル重合ゲル,インターペネトレートネットワークゲル,プラズマ開始重合ゲル)および液相構造の制御(溶液に塩を添加)を行い、ゲルの薬物吸・脱着特性を安息香酸を薬物のモデル分子に用いて検討した。その結果、以下の知見を得た。(1)ゲルの物理的網目構造の変化は吸着量に影響しない。しかし、低温域におけるゲルの強度向上を図るうえでより密な網目構造を有するデバイス設計が有利である。(2)溶液に支持塩を添加するだけで高温域のみ吸着量を飛躍的に増加できることが明らかとなった。吸着量増加の割合は添加するイオン種およびその濃度により異なる。(3)(1),(2)いずれの場合も温度スイングによりモデル分子の吸脱着は速やかにかつ可逆的に行われる。 システム(2)では、電気刺激応答性薬物徐放システムの基礎的な研究として,電気のon-offまたは電位の変化による膜特性の変化について検討した。ヌクレオフィルターの片面に金を蒸着し、ピロールを高分子アニオンと同時に電解重合することにより、高分子アニオンを内蔵するポリピロール膜が製膜できた。この膜をH型透析セルにはさみ,一方にグルタミン酸ナトリウム溶液,他方にNaCl水溶液とし、膜の電位を変化させて拡散透析および電気透析を行った。ドープ膜では速い透過流束が,脱ドープ膜では透過が制御された。ドーパント種により透過制御様式を分類できることが分かった。
|