研究概要 |
ディッシュレベルにおいて,(1)高密度凝集体(spheroid)と,(2)浮遊サンドイっチコラ-ゲンゲル培養法のそれぞれについて,主として生物学的検討を行った.(1)については,ホルモンを適当に組み合わせることにより,ポリリジン被覆表面上で浮遊spheroidのみを選択的に形成させる培養条件を確立し,大型の培養ディッシュ(500cm^2)での安定大量形成を行えるようになった.ハイブリッド型人工肝臓を実際に臨床応用する際には,患者の血漿が細胞培養モジュ-ルを潅流するため,回収したspheroidの固定化が必要となる.まず,浮遊状態での緩やかな撹拌による培養を試みたが,細胞状態の悪化が起こり,長期継続は不可能であることがわかった.そこで,担体表面に一部付着伸展した状態で固定化する方法について検討を行った結果,spheroid形成を促進するポリリジンと,細胞の伸展を促進するファイブロネクチンを適当な割合で共存させた表面上で,高機能を保持したまま一部付着伸展で表面に固定化できることが判明した.さらに,非働化牛胎児血清を高濃度で含有する培地を用いて検討を行ったが,spheroidは数時間の内に崩壊に至った.さらに詳細な検討が必要であるが,血漿潅流モジュ-ルでのspheroidの安定固定化法に関する検討の必要性が示唆された.(2)については,フィルタ-上に簡便に細胞を培養することができるように設計された培養器(ミリセル;ミリポア社製)を用い,物質交換面及びゲル層の幾何的配置のアルブミン分泌能における効果を検討した.その結果,in vivoと同様にゲル層を介して細胞層の上下両面で物質交換することにより,細胞機能発現レベル及び維持期間を大幅に向上させうることが判明した.このように,“in vivo細胞周囲環境の物質レベルに還元し,単純化・再構成"することが,高機能の長期発現に重要であることが実証された。
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