研究概要 |
平成4年度は,利用する培養形態を高密度細胞凝集体(スフェロイド)に絞り,ハイブリッド型人工肝臓モジュールへの利用を目的として,検討を行った.モジュール構築の方法としては,浮遊スフェロイドを大量形成・回収後に固定化することにした.この製作方法に従い,スフェロイドを大量かつ迅速に形成させる方法と,スフェロイドを安定に機能発現させる固定化方法について検討した. スフェロイドの大量迅速形成については,採取直後の単一細胞を浮遊状態で緩やかに撹拌・接触させる方法を試みた.まず,小規模(5mL)浮遊培養法である旋回培養法を行った.その結果,細胞は約24時間で凝集体を形成した.この凝集体は長期連続撹拌すると急激に機能を失ったが,24時間後に平板上に再播種固定化することにより,平板上での静置培養でゆっくりと形成させたスフェロイドと同等な機能を長期に維持することを確認した.すなわち,迅速形成させた細胞凝集体を“スフェロイド"と呼ぶことができる.この結果は,既にBiotechnology Techniques誌に掲載された.さらにスピナーフラスコを用いる大規模浮遊培養(50-100mL)でも良好なスフェロイド形成が確認された.このように,スフェロイドの形成時間及び形成に要する装置容積を大幅に小さくすることができた. 一方,患者血漿が潅流する人工肝臓モジュール内に,スフェロイドを安定に固定化する方法については,血清濃度を高めたりホルモン添加濃度を生理レベルまで下げたりした培地中で,典型的な固定化方法での機能発現の比較検討を行った.すなわち,ポリリジン上再付着・アルギン酸カルシウムゲル包括・コラーゲンゲル包括の3種である.その結果,コラーゲンゲル包括固定化が最も優れていることが明らかとなった.この成果は,人工臓器誌に発表予定である.また,Artificial Organs Today誌に投稿中である. 以上,今年度はスフェロイドを利用する人工肝臓モジュールを設計・製作する上で,重要と考えられる2つの成果を得た.
|